学祭の季節である。

ボクは娘(大学4年)の学祭に3年続けて訪れている。彼女は学内の劇団に属していて、その公演を観るのがいちばんのお目当てだ。学生の劇団とはいえ脚本はしっかりしているし、個々の演技も上手だし、決してバカにできないのである。元々アングラ好きなボクにとっては芝居を観る時間は至福の時、今年はどんな公演が観られるのかずっと楽しみにしていたのだ。しかーし、なんと今年はトラブルで公演中止になったと聞いて残念無念。あてもなく学内をさまよっていたら、学生の客引きに捉まって焼きそばとさんまの塩焼きとタピオカミルクティーを買わされてしまった。無理。

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続いて息子(大学1年)の学祭へ。彼は部活にもサークルにも入っていないので、初年度でもあり彼自身がお客さん状態だ。でもってオヤジとキャンパスを練り歩くのは恥ずかしいらしく、ゼミ友とつるんで人混みへと消えて行ってしまった。ひとり残されたボクは単独での行動となったのである。トホホ。

学内で各ゼミの研究展示や文化部の催しを見て回っていると、学生たちの日常が垣間見れてとても新鮮な気持ちになり、約30年前のある学祭での出来事を思い出した。

大学2年のときボクは友人に誘われて、当時イギリスの首相を退任したばかりのマーガレット・サッチャーさんの講演を聞きにある学祭へ行った。会場の大隈講堂は黒山の人だかりで熱気に満ち溢れていて、講演も首相在任中のエピソードや世界のウラ話などで大盛り上がりだった。そして鉄の女と呼ばれたその人は講演の最後をこんな言葉で締めくくったのだ。

「若者たちよ、お願いだから時間を無駄に使わないでください」

同時通訳はそれまでは淡々と語っていたのに、最後のフレーズだけは声高に熱弁を振るってみせた。あのときボクたち聴衆すべてがシーンと静まり返って、その情景はとても感動的であった。
学生時代、ホントにいい時間を過ごして欲しい。切に願うのである。

さて、ボクの大学時代はバブル華やかりし頃で大学の学祭には『学園祭の女王』が君臨していた。当初はアイドル歌手(斉藤由貴、南野陽子など)が多かったが、ロック系女性シンガー(白井貴子、山下久美子など)が台頭し、その後セクシー路線(杉本彩、森高千里など)へと変遷していった印象がある。今ではSNSが普及してタレントとの距離が近くなったが、当時の芸能人は別世界のヒト。生で見られる機会なんて滅多になく、学祭に来ようものなら挙って見に行ったものだった。

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【約30年前とある大学の学祭の一風景 学園祭の女王ではなく…】