当院にはFDGの合成装置が2台あるのだが、1台はクリニックの前身である甲府脳神経外科病院PETセンターから移設してきたものだ。今年メーカーの保守が終了することを受けて、惜しみながらも現役引退をさせることと相成ったのである。かれこれ17年以上に亘り大きなトラブルや故障もなく、ただ黙々とFDGを作り続けてくれた合成装置「トレーサーラボ」には心よりご慰労申し上げたいと思う。長いことありがとう! ホントご苦労様でした。
そしてそれに伴い新たに導入した合成装置「ネプティス」が、3ロット試験などの法的手続きを済ませて、本日いよいよお披露目となったのである。今朝は担当技師のプレッシャーたるや相当なモノだったようで、いつもより30分も早く出勤してサイクロトロンを起動させたらしい。ボクが毎朝の日課どおり7時30分過ぎにラボ室を訪れると、技師がマニュアルを片手に、慎重に試薬等をセットアップしている最中であった。ボクはいつもとは異なる張り詰めた空気感に耐え切れなくなり、軽くあいさつしただけで一旦その場を離れて自席に戻った。40分後、缶コーヒーを飲んで気分を上げてから再びラボ室を訪れると、今度は2名の技師と1名の薬剤師が固唾をのんでコンソールをのぞき込んでいたのである。まるで産まれたての仔馬が自力で立ち上がる勇姿を静観する母馬のように、彼らはFDG合成の進捗をじっと見守っているようであった。そこから待つこと約30分、ついに60GBqを超えるFDGが無事に合成されたことが確認できたのである(あたりまえだ)。品質検定も難なく通過して、期待のホープ(古い)であるネプティス産の初FDGは9時30分頃に看護師の待つ処置室へ払い出されていったのである。
ネプティスの期待のホープたる所以は、従来機よりも合成時間が短縮されたことと、何より1回あたりの合成コストが約20,000円も軽減したことである(当社比)。何から何まで値上がりの昨今において、この経費削減は大きいし嬉しい。浮いたお金で今夜は発泡酒ではなくビールを飲もうかなと思ってしまうほどだ。いやいやそれでもやっぱりボクは今宵も発泡酒を飲まざるを得ないのである(自分のお金じゃないし)。トホホ。
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【期待のホープ・ネプティス】
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【操作する技師たち】