昨日の診療終了後、当クリニックのランドマークであるエントランスの水槽に黒山の人だかりができていた。なんでもカクレクマノミが産卵をしたと、女性スタッフたちが嬉々として教えてくれたのである。どれどれとボクは人波をかき分けて水槽を見渡してみたら、珊瑚の上に大量の卵が産みつけられていたのだ。色は赤ではなく黒っぽくなっているので、すでに産卵から数日が経っていると思われた。そしてその上を2匹のカクレクマノミが愛おしそうに周回しているではないか。鼻の下を伸ばしてのぞき込むボクに対し、あたかもSP(セキュリティポリス)が不審者をロックオンしたかのような鋭い眼光で睨みつけてきたのだ。おお、これぞ母性本能かと思ったら、お世話をしているのはオスだという。魚界もジェンダーフリー、いまはオスにだって母性があっていい時代だ。たいへん健気なオスなのである。たまたま清掃のため居合わせたフィッシュランドの担当者によると、これだけ大量の産卵はこのクラスの水槽では珍しいとのことであった。いままで水槽内の魚やカニが無残にも死んでしまうことはあっても、新たな命が産まれてくることはなかった。これはクリニック開業5年目にして初の快挙と言っていいのかもしれぬ。スタッフ一同カクレクマノミの孵化を今か今かと心待ちにしているのである。
【カクレクマノミの卵】
ところが今朝7時に出勤してワクワクしながら水槽に目を遣ったら、あれだけあった卵が一粒たりとも見当たらないのである。ボクは自分の目を疑った。前後左右と立ち位置を変えて何度も何度も水槽内を探したが卵はついに見つからなかったのだ。昨日の19時には確かにそこに存在していたのに、たった一夜にして忽然と姿を消してしまったカクレクマノミの卵の群。いったい何処へいってしまったのであろう。他の魚に食べられてしまったのか。夜間、照明の落ちた真っ暗な水槽の中であれだけの卵を残渣なくキレイさっぱり平らげることができるのであろうか。まるで神隠しにでもあったかのような気分である。お世話係のカクレクマノミが珊瑚の周りを当てもなく彷徨っている。そのそばを親友のナンヨウハギが楽しそうに泳ぎ回っている。今日ボクはその姿があまりにも不憫すぎて、見ていられないのであった。
【卵がなくなり彷徨うカクレクマノミ】
【カクレクマノミの卵】
ところが今朝7時に出勤してワクワクしながら水槽に目を遣ったら、あれだけあった卵が一粒たりとも見当たらないのである。ボクは自分の目を疑った。前後左右と立ち位置を変えて何度も何度も水槽内を探したが卵はついに見つからなかったのだ。昨日の19時には確かにそこに存在していたのに、たった一夜にして忽然と姿を消してしまったカクレクマノミの卵の群。いったい何処へいってしまったのであろう。他の魚に食べられてしまったのか。夜間、照明の落ちた真っ暗な水槽の中であれだけの卵を残渣なくキレイさっぱり平らげることができるのであろうか。まるで神隠しにでもあったかのような気分である。お世話係のカクレクマノミが珊瑚の周りを当てもなく彷徨っている。そのそばを親友のナンヨウハギが楽しそうに泳ぎ回っている。今日ボクはその姿があまりにも不憫すぎて、見ていられないのであった。
【卵がなくなり彷徨うカクレクマノミ】