PETクリニック事務長のトホホblog

山梨PET画像診断クリニックの白石です。 ・PETについて・当クリニックの活動について・日々雑感(これが一番多い)気ままに発信しています。 ★ホームページリニューアルに伴い、ブログも引っ越しました★ 過去ログも覗いてみたいという稀有な人は、お問い合わせください。

2021年01月

昨日の診療終了後、当クリニックのランドマークであるエントランスの水槽に黒山の人だかりができていた。なんでもカクレクマノミが産卵をしたと、女性スタッフたちが嬉々として教えてくれたのである。どれどれとボクは人波をかき分けて水槽を見渡してみたら、珊瑚の上に大量の卵が産みつけられていたのだ。色は赤ではなく黒っぽくなっているので、すでに産卵から数日が経っていると思われた。そしてその上を2匹のカクレクマノミが愛おしそうに周回しているではないか。鼻の下を伸ばしてのぞき込むボクに対し、あたかもSP(セキュリティポリス)が不審者をロックオンしたかのような鋭い眼光で睨みつけてきたのだ。おお、これぞ母性本能かと思ったら、お世話をしているのはオスだという。魚界もジェンダーフリー、いまはオスにだって母性があっていい時代だ。たいへん健気なオスなのである。たまたま清掃のため居合わせたフィッシュランドの担当者によると、これだけ大量の産卵はこのクラスの水槽では珍しいとのことであった。いままで水槽内の魚やカニが無残にも死んでしまうことはあっても、新たな命が産まれてくることはなかった。これはクリニック開業5年目にして初の快挙と言っていいのかもしれぬ。スタッフ一同カクレクマノミの孵化を今か今かと心待ちにしているのである。
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【カクレクマノミの卵】

ところが今朝7時に出勤してワクワクしながら水槽に目を遣ったら、あれだけあった卵が一粒たりとも見当たらないのである。ボクは自分の目を疑った。前後左右と立ち位置を変えて何度も何度も水槽内を探したが卵はついに見つからなかったのだ。昨日の19時には確かにそこに存在していたのに、たった一夜にして忽然と姿を消してしまったカクレクマノミの卵の群。いったい何処へいってしまったのであろう。他の魚に食べられてしまったのか。夜間、照明の落ちた真っ暗な水槽の中であれだけの卵を残渣なくキレイさっぱり平らげることができるのであろうか。まるで神隠しにでもあったかのような気分である。お世話係のカクレクマノミが珊瑚の周りを当てもなく彷徨っている。そのそばを親友のナンヨウハギが楽しそうに泳ぎ回っている。今日ボクはその姿があまりにも不憫すぎて、見ていられないのであった。
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【卵がなくなり彷徨うカクレクマノミ】

毎年この時期にボクは学生時代の仲間たちと新年会を開いては、互いに久闊を除している。ここ数年は都内のスパ施設でやるのが慣例となり、お風呂に入って宴会して大盛り上がりでそのままバタンキューという昭和のサラリーマンのような極楽フルコースを満喫していたのである。ところが今年はこの状況下、スパや宴会は感染リスクが高すぎるので新年会は中止になると高を括っていたのだが、幹事さんから代替策としてオンライン新年会の招待が届いたのだ。そうか、この手があったのか。というわけで先週末、オンライン飲み会に初参戦と相成ったのである。
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【オンライン飲み会の様子】

まずはビールを3リットル(!)用意してから、例年通り事前に入浴を済ませ、リラックスモードでパソコンの前に座ってみた。開始時間に入室してみるとまだ数人しかいなかったのだが、次第に三々五々集まりだして総勢15名の大宴会と発展していったのである。なるほど、これが噂のオンライン飲み会か。ひとりひとりが近況を報告したり、昔話に花が咲いたりでそれなりにワイワイガヤガヤと笑いながら進行していったのだが、程なくしてオンライン飲み会には決定的な欠陥(デメリット)があることに気が付いたのである。それはオンラインの場合、原則として会話のグループが「1組」しか成り立たないのだ。リアル飲み会であれば、例えば10人いたとすると会話のグループは「3人と4人と3人の3グループ」とか「2人と2人と3人と3人の4グループ」とか自然な成り行きで運用される。隣の席の人とのおしゃべりに向かいの席の人が加わったりして、会話のグループ数は常に変動しながら人々は自由自在に会話に参加したり離脱したりできるのである。しかしオンラインでは「1組」の会話体のなかに全員が収納されているため、個別の会話は極めて困難になるのだ。時間の経過とともに酔いが回ってくると、このフレキシビリティのなさに無力感を感じ始めるのである。あまり関心のない話題が展開されてもそれに付き合わざるを得ず、会話が好転するのをジット耐えなければならない。退屈にモニタ画面に向かっていると、なにか手持ち無沙汰になり眼前のビールをぐびぐびと煽ってしまうのである。これは悪循環でもありストレスなのだ。しかしそれに気付いたときはすでに遅く、ボクは深く泥酔してしまったのである。トホホ。
逆にオンラインで飲み会をやるメリットはなんであろう。その場で完結することは大きなアドバンテージに違いない。終電の時間、代行車の手配、精算支払いの煩わしさがない。会場から帰らなくてよいという安心感は間違いなくリラックス効果を増長させてくれるはずだ。ゆえにこの場合も、だからこそ眼前のビールをぐびぐびと煽ってしまうのである。トホホ。
「週に1回以上飲酒する」男女1000人へのアンケート調査ではオンライン飲み会経験者は全体の26.4%であり、オンライン飲み会を継続したい意向のある人は全体の2割に留まったということである(国交省・日立東大ラボ2020年8月)。この数字はボクも肌感覚で分かるような気がするし、酒飲みは現時点でリアル飲み会を支持するということなのである。オンライン飲み会にはまだまだ改善の余地が残されていると思われ、今後より進化したアプリなどが開発されるに違いない(もう、あるのかもしれないが)。でもボクの場合はオンラインでもリアルでも深酒してしまうという意味では、どっちもどっちで相違ないのである。トホホ。

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【オンライン飲み会後のビールの空き缶】

久しぶりに映画の話である。昨年末に2020年のイチオシ本を紹介したところ、複数の知人から、じゃあ映画はどうなんだという指摘があった。年が明けてしまったが、2020年に観た映画のなかで個人的によかったと思う作品を披露させていただくことにしよう。My movie of the year 2020である。
ボクは昨年の2月の時点で「今年は映画の当たり年になるぞ」と直感していたのだが、その直後コロナ禍に突入して世界中が映画どころではなくなり、製作も配給も止まってしまったのであった。ボクはああ今年はもう映画は観られないのかなと諦めていたのである。ちょうどその頃TOHOのシネマイレージカードを更新したばかりだったので、おいおい損したなと憤っていたのだが夏になるとポツポツと公開が始まって、数本の映画に関心を引かれたのであった。昨年の映画といえば(ボクは観ていないのだが)『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の一人勝ちのように思われるのだが、いやいや実は他にもいい映画が幾つかあったのである(個人の感想)。なかでもボクのイチオシは・・・、ジャーン。
 
『もう終わりにしよう。』(Netflix)
 
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映画とは端的にいうと、自己と他者との関係性を通して観る側に自分探しのヒントを与えてくれるもの、だとボクは思っている。この映画、この「自己と他者との関係性」がたいへんエグいのである。倦怠期を迎えたカップルが彼の両親に会いに実家へ行く車中から物語は始まる。雪の降る日だ。彼女は最初からずっと「もう終わりにしよう」と考えているが言い出せずにいる。感情と価値観の不一致が交差する時間が延々と続くのである。彼の実家は田舎の農場で、行ってみると子羊が死んでいたり、両親は偏屈な言動を繰り返して気味が悪い。不穏な空気、嫌な会話、居心地の悪い実家、そして彼と両親との絡み。ミステリー仕立てでありながら、ある意味ブラックなラブストーリーと採れなくもない。独特なレトリックで迫ってくる傑作であった。
多くの人は他人には晒したくない醜態や、見透かされたくないコンプレックスを持っているものだ。たぶん。人は自身の恥部をどう合理化するのか。そのうえで恋人のような極めて身近な人とどう向き合ってゆくのか。深く考えさせられた映画であった。
 
オマケにもう1本。ジャーン。
 
『ソウルフルワールド』(Disny/PIXAR)
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 これは年末に配信されたばかりなので、これから話題になるかもしれないのだが、大人向けのたいへんシリアスなアニメであった。ボクは大晦日に観て不覚にも号泣してしまったのである。詳細は別の機会に触れることにする。
 
先に推した『もう終わりにしよう。』は心に余裕がある時に、そして後者『ソウルフルワールド』は心が弱っている時に観ていただきたいと思うのだが、いづれもロードショー公開された映画ではなく、NET配信というのがミソである。これぞ映画のニューノーマルなのであろうか。
ボクはあまり意識していなかったのだが、ここ数年は選択的にヒューマンドラマ系を多く観ていて、ミステリーやアニメーションを軽んじていたような気がするのである。加齢のせいなのか、あるいは心が乾いているからなのか、理由は分からないのだけれど。きっと前者だと思うのである。トホホ。

シンクタンクの株式会社矢野経済研究所さんが編纂した『PET検査に関するアンケート(2020年)』を通読させていただいた。なかなか興味深い内容だったのでその一部を紹介しようと思ったら、奥付に《禁 無断転載》と記載されているのである。なのでここでは適度な引用に留めることとする。
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まず、『現状の体制での1日あたりの最大検査人数は』という問いに対して、「9人」と回答した施設が18.0%で最多。次いで「6人」が12.4%であった。この開きは恐らくPET装置を2台かそれ以上所有している施設が「9人」で、1台のところが「6人」ということだと思われる。当クリニックはPET装置2台で最大「20人」ですけど何か。
『昨年度(2019年度)の収支はどうか』という問いに対しては、「大きく黒字」と「黒字」で44.7%もあり、「プラマイゼロ」を合わせると67.1%にも及ぶ。この数字はどう評価すればいいのであろうか。利益の出ている施設が5割近くあるのに対し、全体の3分の1の施設は赤字運営ということになる。普通こういったストレートな問いに対しては、例え「黒字」であっても「プラマイゼロ」くらいに謙遜して答える心理が働くものだ。そうした心的傾向を踏まえると黒字施設はもっと多いのかもしれない。当クリニックはというと...(言えない)。
『今後PET施設を継続的に運営していく中で重要なポイントは(複数回答可)』に対し「検査数の増加」が81.3%と断トツに高いのは分かるが、次位が「アミロイドPET等の検査種類の拡大」が36.0%には驚いた。多くの施設が将来的にFDGだけではやっていけないと考えているのであろうか。検査種類を増やすには設備投資やスタッフの教育などが不可欠で相応のコストがかかる。当クリニックではアミロイドPETは10数例の経験があり、別の検査についても関心がないわけではない。
『各スタッフ数について』に対しては常勤医師(読影)「1人」が40.4%で「2人」が22.5%なのは妥当なところだが、「0人」と回答した施設が11.2%もあるのだ。常勤看護師も「1人」が30.3%で最多だが、「0人」が「16.9%」で次位となっている。放射線科医師や看護師を非常勤で賄っているのであろうか。読影は遠隔(外注)に出しているのか分からないが、たいへん気になるところではある。人員の配置は経営面もあるが、医療の質の担保に深くかかわってくる重要なファクターなのである。当クリニックでは常勤医師(読影)は2名で常勤看護師は4名が在籍している。
『ご意見を自由にお聞かせください』に寄せられた意見が切実でいい。「PET検査は悪性腫瘍診断には欠かせない検査であり、赤字でも維持しなければならない」「保険の審査が厳しい」「当院はDPCで行っているため入院で検査すると持ち出しになる」「共同利用率のしばりが厳しすぎる」「現行法(RI規制法)は無駄が多すぎる」「地方では検査数の増加は難しい」「デリバリーでは収益は上がらない」「アミロイド製剤の件で、認知症の治療薬が無い現状、どのようにフォローアップしていくべきか、倫理的に問題があるのでは」「返戻の理由が分からない」「がん以外での使用が難しい」「ガン診療において非常に重要な役割を担っている」「PSMAや心筋血流製剤などの保険適用が待たれる」などなど。
全国に約400あるPET施設。規模も設立母体も診療環境も収益状況も様々であるが、抱えてる悩みはあまり違わないのだなと思うと何だかちょっと嬉しくなったのである。

本日からPETクリニックは2021年の診療を開始した。

昨年は9日間あった年末年始休暇も、今年は土日の絡みがなく5日間だけであった。どうせ不要不急の外出ができない年末年始なら、むしろ休みなんて少なくていい。そう思っていた人も多いのではないだろうか。ボクは何年かぶりに遠出を避けて自宅でゆっくりテレビでも観ようと炬燵に潜り込んだのだが、つまらなさ過ぎて飽き飽きしてしまったのである。昔は年末年始のテレビといえば非日常感があってワクワクしたものだが、今は番組表を探しても年末時代劇や向田邦子の新春スペシャルドラマが見当たらない。堺正章のかくし芸大会もいつの間にか消えてしまったようである。お笑い番組は若いタレントさんのトークが主体で内輪ネタが多くあまり笑えなかった。やっぱり正月の演芸といえば染之助・染太郎のような華が欲しいところである。あの傘を回しながら枡を転がす芸を継承する気概のある芸人はいないのであろうか。これが時代のテレビ離れというものなのか。そんなことを考えながらテレビのスイッチを切って、アマゾンプライムとネットフリックスに浸かってしまったのである。酒を飲みながら・・・。たいへん不本意ながら今年ボクの正月は、何ら代わり映えのない退屈な時間を過ごすことに終始したのであった。トホホ。
 
改めて、新年あけましておめでとうございます。
皆さまにとって健やかな、そして穏やかな一年となりますよう、心からお祈り申し上げます。
 
山梨PET画像診断クリニック、今年もどうぞよろしくお願いいたします。
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【受付には鏡餅と消毒用アルコールのツーショット、今風だ】

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