PETクリニック事務長のトホホblog

山梨PET画像診断クリニックの白石です。 ・PETについて・当クリニックの活動について・日々雑感(これが一番多い)気ままに発信しています。 ★ホームページリニューアルに伴い、ブログも引っ越しました★ 過去ログも覗いてみたいという稀有な人は、お問い合わせください。

2020年10月

昨日のCNNニュースにこんな記事が掲載されていた。
オランダがん研究所などの研究チームが、これまでの医学では知られていなかった臓器を発見したとして、医学誌に研究結果を発表したとのことである。それは鼻腔と咽頭が繋がる部分に対になった未知の腺が見つかったということだ。当初は新発見の臓器なのか、唾液腺の一部とみなすべきなのかの議論もあったらしいが、詳しく調べたところ解剖学的にも機能的にも新しい器官であることが裏付けられたと結論付けていたのである。そしてこの臓器を発見したのは、なんとPET/CT装置だというから驚き桃の木山椒の木だ。CTMRIなどの形を見る検査(形態画像)では周囲との境界がはっきりとせず発見には至らなかったが、PSMA-PETという特殊な検査(機能画像)によって見つけ出すことができた、と記事はまとめていた。すごい発見である。
PSMAとは簡単にいうと前立腺がんに高発現する膜タンパクのことである。これをPET/CTで視覚化して、さらにPSMAに放射性薬剤を結合させピンポイントで照射するという、前立腺がんに対する新しいアプローチであり、海外ではすでに始まっている。今回の発見は前立腺がんの患者さんの転移検索のため頭頚部の画像を撮ったことがきっかけになったらしい。

それにしてもこの現代において人体の構造で新たな臓器の発見があるなんて衝撃的すぎるではないか。最近できた器官で、昔はなかったのだろうか。どんな役割を担っているのだろうか。まだ発見されていない臓器が他にもあるのではないだろうか。人体とは実に神秘的なのである。

実は「PSMA-PET」についてはボクたちも予てから高い関心を持っていて、コッソリと下調べをしているところなのである(言ってしまった)。数年後に弊クリニックで実用化できるかもしれないし、できないかもしれない。今はそんな中途半端な感じでウロウロしてるのである。

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【青い矢印が新たに発見された臓器】

前回のブログである美術館へ行ったことを書いたら、複数の方から「クリニックだって美術館みたいに絵がたくさんあるジャマイカ」と指摘を受けた。そうであった。すっかり忘れていたのだ。毎日のように自然と視野に入っているので感動も薄れてしまっているが、実は弊クリニックには結構スゴイ絵画が飾られているのである。ここでいう「スゴイ」というのは「有名な」と「貴重な」が含意されているとご理解いただいて差し支えない。つい先日もいきなり宅配便で大きな荷物が届いたのだが、その形態からすぐに絵画だと察しがついたのである。また理事長が衝動買いしたのかなと、恐る恐る開けてみたら絹谷幸二の原画(!)であった。他にも東山魁夷、増田誠、フェルメール、アンディ・ウォーホールなど洋の東西を問わず、時代も系譜もカオスであるが、世界に名だたる作家の作品が所狭しと飾られているのだ。受診のついでに絵画鑑賞するもよし。絵画鑑賞のついでに受診するのもよし。それらもまた一興であろう。ちなみにクリニックの初診料は2880円(診療報酬)だが、入館料は無料となっているのである。


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【弊クリニック所蔵の絵画】

所用で上京したさいに少々時間があったので、久しぶりに六本木ヒルズの森美術館に寄ってきた。ここはボクのお気に入りの美術館のひとつ、森タワーの最上階53階にあるのだ。この日は利用しなかったが、追加で500円払うとスカイデッキに出られて都心を一望できる。日中もいいけれど陽が落ちてからが見応え抜群で、東京タワーやスカイツリーとはまた違った夜景を満喫できるのである。

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【森美術館入口】

実はコロナ禍の今、人気の美術館や博物館などは穴場中の穴場スポットなのだ。密を避けるため入場人数を制限しているので、いつもなら人に押し流されながら爪先立ちで観ていた展示も、いまならゆっくりと自分のペースで鑑賞できるのである。客もスタッフもみんな黙っているし、施設の感染対策も徹底していてストレスが少ないのもいい。今回は前から気になっていた『STARS展 現代美術のスターたち-日本から世界へ』を堪能させていただいたのである。日本の現代アートの大御所6名(草間彌生、李・ウファン、宮島達男、村上隆、奈良美智、杉本博司)を一堂に会し、6つの個展を順々に観て回るような一粒で六度おいしい展覧会であった。なかでもボクの一番のお目当ては奈良美智である。奈良さんはドローイングや絵画だけでなく、彫刻、写真、インスタレーションまで手掛ける多才なアーティストだ。ボクは特に奈良さんの少女像が好きでついつい見入ってしまうのである。可愛いけれど残酷で、挑発的であるが母性的、邪悪さと無垢な心。相反するベクトルを共存させる作風がたいへん刺激的なのである。こうやって非日常的な時間に浸っていると、全身にまとわりついていた余分なものがそぎ落ちて、五感が研ぎ澄まされてくるような気がするのである。リフレッシュ。自粛やおこもりで停滞した気分を払拭するには、好みの芸術に触れるのも一手なのだと再認識したのであった。 

この森タワーには中層階に、Apple Japanをはじめグーグルやノキア、フェラーリ・ジャパンなど世界有数の会社がオフィスを構えているのだが、最上階に美術館とアカデミーヒルズという学術関連のフロアが配置されている。これは経済活動よりも、文化や芸術活動の方が上にあってほしいという、森ビルの森稔前会長の理念からだということだ。達観である。


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【奈良美智の作品】

ついにラッピングバスのリニューアルが完了し、新デザインを施されたバスがお披露目となった。さっそく平和通りで見たよ!という報告もいただいているのだ。既報のとおり、今回はマンモPETではなく本院(甲府脳神経外科病院)の広告を担っての運行である。本院では6月から「物忘れ外来」を開設し認知症診断に注力していて、その物忘れをモチーフにしたラッピングなのである。この外来ではMRISPECTといった最新の画像検査と物忘れテストや血液検査で正確な診断をつけ、適切な治療へとつなげてゆく。いずれボクも受診しなければならないはずだ。なんか最近物忘れが多くなったなと気になる方は、まずは甲府脳神経外科病院の「物忘れ外来」を受診されたい。なにごとも早期診断・早期治療開始に勝るものはないのである。

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【新ラッピングバス】

さて今回のラッピングのキーワードは『豊かな人生を…』である。
唐突だが「人生において豊かさとは何か」と問われて、即答できる人はどれだけいるだろうか。何があれば豊かで、何がなければ豊かでないのか。夢か、仕事か、家族か、仲間か、お金か、時間か、健康か。若い時と老いてからでは豊かさは変化するのか。それとも普遍的なものなのか。日頃多くの方々と接していると、年齢や性別、職業には全く関係なくたいへん豊かな印象を受ける人もいれば、ちょっと豊かじゃないなと気の毒に思えてしまう人もいる。この違いは何に由来するのかボクにはよく分からないのである。世の中には「解のない問い」というものが存在する。この「解のない問い」の答えを探してドツボにはまっている人を時々見かけるが、そうしたとき豊かでないな思ってしまうのである。「解のない問い」の解は人それぞれであり、どうしても分からず不安なときは、答えなど見つけなくていいのである。人の心の豊かさとは、案外プリミティブな感覚が作用しているのかなと薄々覚っているのだが、いかがであろうか。

ボクはよく普段の素行の悪さから豊かさのカケラもない人間だと思われがちだが、本人としては今まで出会った人たちにも恵まれて割と豊かな人生を送ってきたのではないかと思っているのである。ただし、財布の中身と髪の毛の量は決して豊かではないのだけれど。トホホ。

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【豊かな人生を…】

 

「いきなりですけどね、うちのオカンが乳がん検診を受けたいらしいんやけど」

「あっ、そうなんや」

「その検査の名前をちょっと忘れたらしくてね」

「ほー、受けたい検査の名前忘れてもうて、どうなってんねんそれ」

「でまあ、いろいろ聞くんやけどな、全然分からへんねんな」

「分からへんの? ほなオレがね、オカンの受けたい乳がん検診の名前、一緒に考えてあげるから。どんな特徴いうてたか教えてみてよ」

「あの〜、たしか、マンモなんとかいうらしいねんな」

「おー、それ絶対マンモグラフィーやないかい。すぐ分かったやん、こんなもん。完全にマンモグラフィーやがな」

「でもこれがちょっと分からへんのやな」

「何が分からへんのよー」

「いや、オレもマンモグラフィーと思うてんけどな。オカンが言うには乳房を挟まないヤツいうねんな」

「ほなマンモグラフィーと違うか。マンモグラフィーは2枚の板で乳房を縦や斜めに挟むんよ。それで痛がる人もいてるらしいねんで」

「そやねんな」

「ほな、もう一度詳しく教えてくれる?」

「検診に対応してくれるのは女性スタッフなんやて」

「マンモグラフィーやないかい! いまどき、受付や問診から検診の介助までみんな女性スタッフや」

「それでな、日本人に多い高濃度乳房(デンスブレスト)の人でも病変がよう映るんやて」

「ほなマンモグラフィーちゃうやないか」

「おー」

「高濃度乳房(デンスブレスト)はマンモグラフィーでは白く映ってしまって画像の評価が難儀なんやからあれ」

「そやねんそやねん」

「やっぱりマンモグラフィーちゃうがな。オレは何でもお見通しやねんぞ」

「ほーなー、分からへんねんでも」

「何が分からへんねん」

「その検査な、山梨県内には1台しかないねんて。だからマンモグラフィーではないねん」

「マンモグラフィーちゃうなら、先ゆえよ!」

「んで、オトンが言うにはな」

「オトン?」

「マンモPETちゃうかって言うてんねん。マンモPETならな、高濃度乳房(デンスブレスト)の人でもしっかりと病変を描出できんねんて。そんでな、挟まないから痛くないんやて」

「絶対それやわ! マンモPETやわ!!」

10月はピンクリボン月間や。マンモPET乳がん検診な、女性にやさしいねんて。はよ受け」

「もうええわ!」

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【痛くない乳がん検診 マンモPET

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